古代エジプト美術の世界 魔術と神秘
発行所 :株式会社平凡社
エジプト美術についてこの本から引用する
【その目的は、見る人にひと目で最大限の情報を与えることであり、描かれた対象を瞬時に認識してもらうためである。実際の姿に近づけて事物を描くより、見る人が一見してわかるように描くことが重要だとされた。(中略)エジプト人を描いた人物像も平らで無色の背景のなかに描かれた。描かれた場面の時間を示唆するものは一切なく、空間を表す美術的な工夫もほとんどないため、あらゆるものが時空を超越した背景に描かれる】
【それぞれの事物はそれがもっとも特徴的に見える角度から描かれた。】
【人物のような複雑な対象を描く際は、その人間がもつ体のもっとも特徴的なところを強調し、それぞれを組み合わせて描いてみせた、たとえば、人間の頭部をもっとも特徴的に見せる方法は、横顔を描くことであり、現代でも硬貨などに採用されるが、正確に横顔を描こうとすると、目の形がわからなくなってしまうので、エジプト人は正面を向いたときの目を描き、そのままその目を横顔に組み入れた。(中略)人間の姿はこのようにそれぞれの部位が組み合わされて描かれている。】
この本では他にもエジプト美術について説明してあるが、もう一つだけ引用すると
【上部のものは後方にある】
つまり供物台に置かれた供物は見る側から後方にある物ほど上部に描かれるということ。これも供物のすべてをはっきりと描くという約束事による。