kiyomizuzaka48の日記

一日一日を楽しく暮らしている老人の暇つぶしです。使用しているカメラはZ50ⅡとZ6ⅢとCOOLPIXーW300です。適当に撮って楽しんでいます。

八犬伝

原作:山田風太郎八犬伝

監督:曽利文彦

俳優:役所広司内野聖陽、土屋太鳳、黒木華寺島しのぶ栗山千明

 

山田風太郎の「八犬伝」は滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」をもとに葛飾北斎と馬琴の交友関係を描いたものらしいが、私は山田風太郎といえば「忍法」ものという、忍術を超えた超能力の奇想天外な物語しか知らなかったので驚いた。玉田風太郎=エロいという認識しかなかった私には、今回の映画は大きな収穫であった。監督の曽利の作品は「ピンポン」しか観ていない。原作が松本大洋だったので映画鑑賞したのだが、ピンポンという地味な素材なのにCGのつかいかたもうまく、カメラワークも迫力があって最後まで飽きさせない演出は面白いと記憶に残っている。

今回もVFXなどをふんだんに使って緊張感が最後までとぎれない楽しい映画となっている。それとともに、「実」の部分の北斎と馬琴の語り合う姿は、落ち着いて暖かく美しい。特に二人の語り合う場所である馬琴の仕事場のシーンは、馬琴と馬琴の息子の嫁であるお路との共同作業(口述筆記)の場所でも引き継がれ、印象に残るシーンとなっている。この監督の作品は映像が迫力があるとともに美しいのだが、「実」のシーンのお百やお路の、コミカルでありながら心に染みこむ上手い演技が、物語に深みを与えている。他にも、劇場の奈落で、鶴屋南北と馬琴が演劇論を戦わすシーンなども味わい深く思った。演劇における「虚と実」について学ぶことが多かった。また「実」の部分の歌舞伎を本物の歌舞伎役者を使っているので嘘っぽさがなく興ざめしなかった。これからも曽利監督の作品に期待している。

最期に、この映画で一番印象に残っているのは、日頃亭主である馬琴のことをボロカスに言っている女房のお百が、自分の死ぬ間際、自分の部屋から這って、馬琴とお路のいる仕事場にやってきて、そこで命尽きたところ。こういう人間の描き方は大好きです。