
題 名:あの子とO
著 者:万城目学
発行所:新潮社
血を吸わない現代の吸血鬼嵐弓子の学園生活を描いた前作「あの子とQ」の続編。
血を吸わない、太陽の光を浴びても死なない、ニンニクが苦手でないのに吸血鬼であるという不思議な設定なのだが、人の心を微妙に操る力や老化が遅い、人並み以上の体力がある。その能力でチョッピリおこす奇跡が楽しい学園ドラマ。今回はなんとカナダの人狼も登場する。こうした異形のものたちが争うこともなく、ひっそりとそれなりにお互いの領域を守りながら暮らしている。現代のような政治的意図から作られた対立の社会・世界に疲れている私としては、なんとなくほっとする物語だ。そして熊と人もそれなりに住み分けて暮らしている。殺しあうという争いを避けながら。ある意味現代社会の様々な対立・争いを憂いているような物語なのかもしれない。
この物語では吸血鬼や人狼は人間の記憶を選択的に消し去ることができるらしい。神に近い存在なのかもしれない。狼については、日本ではもともとは大神(おおかみ)と表記されていたという説もある。牧畜民のヨーロッパ人の考える狼とは魔物に近いのだろう。そういう意味では人狼も欧米では人に災いをなす魔物で、日本では自然の秩序を守る神に近い存在だといえるのかもしれない。そんな、いろんなことを考えながら読むことができる物語。