kiyomizuzaka48の日記

一日一日を楽しく暮らしている老人の暇つぶしです。使用しているカメラはZ50とZ6とCOOLPIXーW300です。適当に撮って楽しんでいます。

全ての記憶は懐かしい

私が学生時代、男性アイドルタレントたちのコンサート会場で警備のアルバイトをしていた。出演するアイドルたちは皆10代で、少女たちに熱狂的な人気を誇っていた。公演に先立って、警備担当アルバイト学生たちが集められ、出演するアイドルのうち2人が舞台の下に飛び降りるパフォーマンスをすると聞かされた。もちろん観客席と舞台の間には鉄製のフェンスが設置され空間が設けられているが、興奮した女性たちは、そのフェンスを突破してタレントに押し寄せるだろうから、我々アルバイトの警備員がそれを阻止せよということだった。最初は軽い気持ちでフェンスと舞台の間に待機していたが、タレントが舞台下に飛び降りたとたんに、物凄い勢いで女性たちが押し寄せてきた。まるで津波のようだった。我々アルバイト学生は、男とはいっても、普段の生活は不摂生で、毎日酒は飲んでも食事はアルバイト代が入るまで1日に1食か2食ということが多くて、軟弱だったので、すっかり興奮したギャル津波にはとても対抗できずに、舞台まで吹っ飛ばされた。私の友人はかなり体格が大きかったが、まともにギャル津波を受けたため、突き倒され次々押し寄せるギャルの足で踏まれぼこぼこにされた。しかし幸いなことにギャル津波は舞台下でストップし、アイドルタレントは無事舞台の奥に逃げることができた。それを聞いて任務を成し遂げたと喜んでいたら、アルバイトリーダーが警備担当アルバイトを呼び集めて「おまえらなにやってんだ。しっかり受け止めろよ。タレントにもしものことがあったらもう二度と仕事に雇ってくれなくなるぞ。」と怒鳴りつけた。彼は主催者の放送局のアルバイトだけで授業料も食事代、下宿代などの生活費も支払っていたので死活問題だったし、私も、家屋解体工事や産廃処理よりも高給で食事付きで、おまけにタレントが食べなかった弁当ももらって帰れるという破格の条件の仕事がなくなるのは辛かった。そこで次のタレントのパフォーマンスの時には何が何でも防波堤にならなくてはと決意した。アルバイトリーダーも局の社員から防波堤要因を出してもらえるように交渉してくれた。
当日、主催者や関係者が話し合って、2人目の舞台から飛び降りるパフォーマンスは中止になった。

 


汚物で汚れた記憶も、尖った記憶もすべて時間が洗い流し丸く磨いてくれる。すべての記憶は懐かしくなる。