kiyomizuzaka48の日記

一日一日を楽しく暮らしている老人の暇つぶしです。使用しているカメラはZ50とZ6とCOOLPIXーW300です。適当に撮って楽しんでいます。

動物たちは何をしゃっべっているのか?

動物たちは何をしゃべっているのか?

著 者:山極寿一、鈴木俊貴

発行所:集英社

私が学生時代は、人間と動物とは厳然とした境界があるというのが一般的な認識であった。チンパンジーの研究者が野生のチンパンジーが道具を使っているのを発見したということでさへ、学者たちの否定的な意見が多かった。当時のヨーロッパ的思考方法では人間と他の動物とは明確な境界を設けるのが一般的であった。進化論にしてもキリスト教的世界観を破壊したとして評価をされていたのだが、人間を進化の頂点に置くその思考方法は人間中心の世界観を形成した。当時、戦後知識人の代表といわれていた吉本隆明は時空変容という概念で「最も進化した人間を、進化の遅れた猿の観察分析から理解するのは間違っている。逆なのだ。最も進化した人間を掘り下げて研究することが、猿の理解につながる。」といったようなことを言っていたと思う(笑)。しかし、ファーブルの昆虫記や今西錦司の猿学のような徹底したフィールドでの観察結果は、そうした人間中心の世界観から逸脱していた。

 この本では、一年のうち多い年は8ヶ月間、長野県の森にこもり、日の出から日没までシジュウカラの観察を17年以上続けてきた鈴木俊貴と、20才の頃からアフリカのゴリラの群れに加わり、長年月の間研究を続けてきた山極寿一が、動物や鳥の鳴き声を声として分析した研究結果について対談している。そしてそれらの研究から、人間の言語の起源にまで話がおよんでいる。驚くべきはシジュウカラという小鳥の鳴き声には複雑な文法があり、シジュウカラは他の種類の鳥の鳴き声の模倣によって他の種類の鳥を騙すこともあるということだ。

 さらにおもしろいことは、

 山極 

現代社会は情報・知識でいう情報は、暗黙知とは対照的に、客観的に観測可能で言語や数式で表せるものに限られる。 でも、動物は違うんです。豊かな暗黙知を持っていて、それをやり取りすることもある。母ゴリラが子にエサの取り方を教えるようにね。

 鈴木 

面白いのは、人間も動物もそういうやり取りができることですね。

(「動物は何をしゃべっているのか」から引用)

つまり五感を総動員したコミュニケーションを人間も鳥や動物も行っていて、そうした暗黙知は、人間と動物とのコミュニケーションにも使われているということだ。

 この本には他にも「俳句と音楽的な言葉」「音楽と踊りの同時進化」など人間や社会を異なった視点から見つめ直すのにいい刺激が多く載せられている。