八月の御所グラウンド
著 者:万城目学
発行所:文藝春秋社
この単行本には表題作と「十二月の都大路上下る」と二編納められている。「十二月ー」は女子高校生の駅伝全国大会の話なのだが、万城目らしく不思議な現象が。
「八月の御所グラウンド」もシュールで心温まる万城目ワールドが展開されている。私の年代の男ならほとんどの人が憧れたであろう沢村栄治が登場するので、そのあたりからどんどん物語に入り込んでしまった。沢村栄治は私が生まれた頃はすでに他界していたのだが、毎日学校から帰ったら近くの空き地でソフトボールや軟式野球をしていた野球少年にとっては神様のような人であった。彼の野球人としての実績だけでなく、肩を壊して野球ができなくなったいきさつや、外国で戦死したという少年雑誌に掲載されていた話は今でも良く覚えているが、彼が京都と縁が深いことまでは記憶していなかったので、この物語で新鮮な感動を覚えた。更に何故「八月の御所グラウンド」なのかを理解して胸が熱くなった。
この小説を読んだのは、黄桜伏水蔵に行くまでの往復の京阪電車の中だったからか、祗園のたまひでママと三浦布美子のイメージが重なった。
京都大学の元総長の山極寿一は彼の著書の中で「大学ではゼミが終わってから教員と学生が一緒に酒を飲んだ時に学んだことが大きな財産になっている」というようなことを書いていたが、万城目の物語を読むと京都大学の理系のゼミ全体でそういう文化があるようだ。知らんけど(^_-)