kiyomizuzaka48の日記

一日一日を楽しく暮らしている老人の暇つぶしです。使用しているカメラはZ50とZ6とCOOLPIXーW300です。適当に撮って楽しんでいます。

男はなぜ化粧をしたがるのか

「男はなぜ化粧をしたがるのか」

著 者:前田和男

発行所:集英社

この本は2009年発行なので少し時代からずれているかもしれないが、一つの問題の立て方として面白いので取り上げた。

男と化粧については戦後大きな社会問題として取り上げられてきたような気がするが、生物学的にはメスよりオスの方が派手なのはごく普通のことだ。鳥のド派手な飾り羽のように生存に不要どころか邪魔な肉体の一部を持っているものが多い。つまりオスはメスに選ばれるために自分にはなんの役に立たない肉体をもったり行動をする。日本に限れば一方的に男が女を選ぶというイメージは明治になってから、欧米列強と伍するために文化でも西洋を大きく取り入れ、男らしさや女らしさが強調されてからのようだ。その強い男の象徴が明治天皇御真影だ。

天皇と公家たちは、千年もの長きにわたって変わることなく、眉を抜き、化粧をしていたのである。明治天皇は慶応四年(一八六八)八月、十六歳で即位されるが、公家の元服には不可欠の鉄漿と眉を抜き白粉を塗った姿でとり行われている。>

それが御真影では軍服を着て西欧的な強い男を表現している。

<これにより、それまでの男性の狭義の化粧である「美顔メーク」は社会的禁忌とされ、以後、社会の表からは隠されることになる。>

さて、著者はざっと男の化粧を歴史的に紹介したあと、社会と男の化粧の関係に踏み込む。戦時と平時における男女の化粧。

戦国時代には武士たちはほとんど髭を生やした。髭は男らしさの象徴ということなのか。このころ髭を生やさなかったのは今川義元明智光秀など数が少なかった。しかし、

<生来ヒゲの薄い武人たちは肩身が狭かった。秀吉もその一人で、ヒゲが薄いのを常々悩み、前述の『太閤記』にもあるように特性のヒゲをつくらせ着用していたようだ。>

しかし、平時モードでは

<国家・社会制度が整備・充実し、ライフスタイル・文化も成熟・爛熟。女性の地位も相対的に向上。男の化粧行動もこれを反映して、「男らしさ」「逞しさ」「力強さ」などマッチョぶりはむしろ「かっこ悪い」ものとして忌避され、男たちは化粧に憂き身をやつす。>

江戸は圧倒的に男性の数が女性の数より多くて、男たちは女性に相手にされようと、軽石ですね毛の除毛をしたりなどの涙ぐましい努力をしていたという。時代劇の勇ましい江戸っ子たちも女性から選ばれるようにと必死に努力していたということだ。

著者は平時モードでは男女の差が縮まると書いているが、昭和爺の私には化粧やファッションにおいて、現代の若い女性は「男性」を乗り越えてアニメキャラなどの虚構の世界との差を縮めているように思える。

文中の<>は「男はなぜ化粧をしたがるのか」から引用した部分です。