
著者:押井 守
発行:立東舎
私は映画を観る時は映画監督を特別に注意して観たことがない。観た後で監督の名をチェックする程度なので、押井守の映画監督作品も監督名を意識して観なかったが、あとで押井作品だったのかと気づく程度だった。しかし、それにもかかわらず、彼の作品はけっこう観たようだ。いつ過労死してもおかしくないような生活だった当時を思えば、よく観たものだと思う。「うるせいやつら」映画版から始まって、SFものが好きということもあって「機動警察パトレイバー」、「攻殻機動隊」「イノセンス」「スカイクロラ」「アヴァロン」「立喰師列伝」など。本書の内容については本書の前書から引用する。
昔はものを思わざりけり(権中納言敦忠)の高校自時代から現代に至るまで、その年ごとに公開された映画の中から1本の映画を選ばせて(思い出させて)語らせたら、映画マニアあるいはシネフィルと呼ばれる読者になにがしか益することがあるのではないか。あわよくば高度経済成長からバブルを経て昨今のヘタレた日本の戦後史の一部を、映画を通じてフレームアップできるのではないかーーと、企画者および編集者は考えたのでしょう(確信的推論)。
ようするに
世の中には「私の生涯ベスト10選」とか、あるいは「私の読書遍歴」とか、あたかもそれを読むことで他人の人生を俯瞰したような気にさせる、そういった類の企画本や特集記事が存在しますが、それはあくまで「その気にさせる」だけの話であって私個人はほとんど信用しておりませんし、映画鑑賞や読書のための参考になるとは微塵も考えておりません。
という本だそうです。そういうわけでこのブログ記事を読んでも映画を観る楽しさがわかったり、増加したりしません。でも、ただ一つだけホラー映画の楽しみ方でなるほどと思った部分を引用しておきます。
ゾンビ映画は文芸になりにくい。逆にヴァンパイア映画は文芸になりうる可能性を絶えず秘めている。アクション映画に落とし込んでも成立するし、文芸映画としても成立する。『ぼくのエリ200歳の少女』(08)がまさにそうだったけど、ゾンビ映画は、恋人や家族が噛まれたときに多少のドラマがあるけれど、あとは押し寄せてくるゾンビの脳天をブッ飛ばしても罪悪感を憶えないっていう。そこにすべてがある気がする。
波のようにゾンビが押し寄せてくる。あれが正しい。もしゾンビが1人2人だけだったら、袋叩きにして終わりだからね。ゾンビはマイノリティであってはならない。逆にバンパイアは『ニア・ダーク』のようにマイノリティであるべきだし、マイノリティの匂いがする
私は年をとるにつれて映画館に足を運ぶことが少なくなった。いまはユーチューブで昔のTVドラマ「世にも奇妙な物語」をよく観ている。